池の鴨

美術館からの帰り道、まだまだ金沢は寒い。

遅くなって暗い道を歩き出すと、猫がいる。

 

何かを狙っている姿である。

自分と同じ大きさにもなる鴨を狙っているようだ。

 

自分と同じ大きさの獲物を狙うだけでも、勇気があるように思えるけど、池の中を優雅に進んでいる鴨を狙っているところで勇気というか、何か間違っているような気がした。この猫はあの鴨が地面ではない場所にいることを知らないのかもしれない。多分このまま行くとただ池に落ちてしまうんだろうな、と思うと、まだ寒いし少しかわいそうな気もした。

 

なので、わざと猫の横を大股で通り過ぎて、この狩りを阻止してみた。当たり前だけどすごく迷惑そうであるが、私の存在は眼中から一瞬で消え失せ、懲りずにまた池の中の鴨に夢中になっている。

 

とりあえず放っておく。

 

次の日この猫にまた出会った。今日は木の根っこに夢中である。

元気そうでよかった。