集中講義になると、いつも来てくださる大学の先生がいた。
研究分野も広く、それぞれに深い先生のそのときのテーマは「戦争の絵」についてであった。
戦争画というと、原爆の絵などが日本では多い。
でもそのときは、日本が被害にあったときの絵ではなく、東南アジアなどでの日本の兵隊を描いたその国の人々の絵がテーマというか、講義の一部で紹介された。
そういう絵を見たのは初めてだった。実際に苦しみにあっている人が描いた絵で、決して上手いというわけではないけれど、真実にせまってくるような絵であった。
日本兵の蛮行といえる姿と、現地の人の悲しそうな眼がどのページにも描かれていた。これを想像だと言えばそれまでであるけれど。
こういうような絵を大学生になって初めて見ることは、本当はあってはならないのではないかと思った。
本当は、図書館の日本人が描いた辛い戦争絵の隣のコーナーなどにこういう画集もあるべきじゃないかと思う。