傘と冬

金沢にくるまでは冬は晴れているものだと思っていましたが、それは昔の話で、今は、雷が鳴ると冬の訪れを感じ、空の雲がいかに厚いかで冬の只中にいることを実感します。

 

「弁当忘れても、傘忘れるな。」

と言われる北陸の天気。

 

冬に雨や雪が降ることが日常になってきたのはいいのですが、なぜか、傘を持ち歩くことに慣れないのです。

美術館やお店から出るときに、他の人は雨が降っているのに気付くと、どうしてだかどこからか傘をばさっと出し、悠々と水しぶきの中を歩いていきます。わたしは、行きに雨が降っていなければ、帰りのことなど考えないでそのまま出てしまうので、雨の中ぬれながら帰ることの確率の多いことといったら、不思議なほどです。

 

「そうだ。傘を。気にいった傘を持とう。」

 

気に入ったものだったら、持ち歩いたりするのも、億劫でもないし(そうでもないですが)、忘れないかもしれない。

 

しかし、気に入った傘を買って、なくさないで持ち歩こうと思ったのがつい一ヶ月前にも関わらず、気がつくともうその傘が見当たりません。行きに雨が降っていて、今度は帰りに晴れていて、うれしさのあまりそのまま飛び出し、どこかに置き忘れたらしいですが。

 

そういうことは今までにも何回かありますが、気に入ったものだと落ち込み度も半端ないです。

 

私が傘と仲良くなるよりも、晴れる北陸になる方が、簡単なんじゃないかと、ふと思ったりします。